コラム記事
最終更新日:2026年2月8日
五十肩で肩関節が固まってしまう理由
四十肩・五十肩の正式な病名は、「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」と言います。突然発症する「肩関節周りの痛み」と「夜間痛(寝ている時に痛みが強くなる)」、腕があがらない等の「関節可動域の制限」が特徴とされています。とくに、関節可動域制限がある状態から「凍結肩(フローズン・ショルダー、Frozen shoulder)」とも言います。
凍結肩をきたす大きな要因は、①初期の炎症の度合い、②肩関節可動域の制限、③年齢と言われています。そのため、初期対応が非常に重要とされています。理由は、炎症を早期からコントロールすることで、「軟部組織(筋・筋膜・関節包など)が傷付くこと」と「痛みなどによる可動域低下」を最小限に抑えられるためです。軟部組織が傷付くと、表面がザラザラになり、隣接する組織とくっ付きやすくなります。また、傷付いた組織は、「瘢痕化(はんこんか)」するため、より硬くなり動きが悪くなってしまいます。そういった状況で可動域が低下すると、軟部組織自体がお互いにくっ付き、関節全体が硬くなり、次第に固まってしまうわけです。また、関節が固まってしまう「関節拘縮」は、年齢と相関性があるため、高齢になればなるだけ短い時間で関節拘縮が完成しやすいとされています。
よく「五十肩は自然に治る。」といった風潮がありますが、一般的な罹患期間は、4カ月~2年と言われています。もちろん、これより短く回復する例もあれば、完全に治らない例も存在します。そのため、自然治癒に任せるだけで完全に治るわけではありません。すぐに治る場合は、単なる筋疲労かもしれません。五十肩と言うと、簡単に治る病気のような印象を受けますが、罹患期間からもわかる通りに、すぐに治るようなものではありません。肌感覚的に、「病気のイメージ」と「実際の臨床像」が乖離している印象があるため、注意が必要です。
肩関節周囲炎と聞くと、「炎症や痛みがあるなら、なるべく動かなさいでおこう。」とする傾向にあります。実際の急性炎症の期間は短く、ある程度痛みが治まった段階から「徐々に可動域を広げるような運動」を行うことが提唱されています。動かし始めは、痛みなどによって「筋肉がロッキングする現象(痛みを避けるために、筋肉が無意識に固くなる反応)」が起きやすいですが、柔軟体操と同じでストレッチを繰り返すことで、身体が「これ以上伸ばしても大丈夫だな。」と感じ、徐々に可動域が改善していきます。ただし、「反動をつけて強引に、素早く、小さく、小刻みに動かすような運動」は、悪化の原因となるためおすすめできません。「出来る限りゆっくり、可動域を少しずつ広げるように、大きく動かす運動」が大切です。一日にミリ単位で可動域を改善していくイメージです。そのため、痛みのコントロールと併せた可動域訓練が必要不可欠です。治療以外でもご自宅でのセルフケアが推奨されています。
鍼治療は、①局所循環改善による回復促進・抗炎症作用、②筋痙攣の鎮静化などの効果が期待出来るため、早期からの併用をおすすめしています。肩関節が固まってしまうと、長い年月を治療に費やすこととなります。もちろん、服の脱着など生活上においても不便が伴います。「五十肩はそのうち治るもの」と考えずに、炎症を早期からコントロールすることが大切です。